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■第13話 レンギョウ 〜花言葉は 望みは叶えられる〜





彩に気持ちを伝えたい。
迷惑かもしれない、今までのように話せないかもしれない。
それでも、このまま諦めることなんてできない。
言わない限り気持ちに決着なんてつかない。
今日ウエイトが終わったら彩に連絡しよう。

全国大会の決勝リーグまでの4ヶ月ほとんど休みなしで練習を続けていたので今年は正月明けまでは休みになった。

今まで散々耐えてきたくせに、ハッキリ気持ちが決まるともう待てない。(せっかちなんだ、オレは)

「錬、ありがとう。オレこれから彩のとこに行って来る」
一緒にウエイトに来ていた錬に帰り際そう告げる。
「そっか、頑張れよ」
錬は笑顔でそう言ってくれた。
この笑顔にオレは何回救われて来たんだろう。(やっぱりオレが女なら惚れるな、男でも・・・)
「おう、行って来るわ!」
駐車場に向かって走った。

ウエイトが始まる前に3時に彩の家に行くことをメールした。
ケータイを見ても返事は来ていない。
・・・・・・・。
一気に不安が襲う。
どうしよう・・・。
これは勝負の前の敗北だろうか・・・。



駐車場のオレの車の近くに誰かいる。
まさか・・・・・・!?

走る速度が一気に速くなる。
試合の時みたいだ、体が軽くて重い。その影に期待してるからだ。
あの影は・・・彩だ!!



「彩!!」
オレの声に彩が振り返る。
それから優しく笑う。
「あたしも話したいことあったから来ちゃった」
寒い中どの位ここに立っていたんだろう。
頬が赤くなっている。
「いつからいたの? 風邪引くよ」
彩の赤くなった頬を両手で触りながらオレはすごく胸が熱くなった。
「大丈夫! あたし丈夫だからー」
オレの手の中でいつもみたく優しく笑う。
「彩・・・どうしても言いたいことがあるんだ」
ドキドキドキドキドキドキドキドキ・・・・・・。
一気に心臓の音が鳴る。
オレ死ぬんじゃないのか? こんなに早く動いたら。




「あ・・・うん」
彩の顔が少し曇る。
どうしてだろう・・・。
オレの気持ち、もう気づいてるよな・・・。ダメのサインか?(どーしよーーー!! 怖えーーー!!)
「車に乗らない? 彩カゼ引くといけないし」
オレはカギを開けて彩を車に乗せる。
心臓が一気に大きな音を上げる。
聞こえてるんじゃないかな・・・。
「あ・・・あのしおりありがとう。すごい試合中励みになった」
って、それはいつでもいいだろう!! 言わないといけない言葉が出てこない。
「良かった、渡した甲斐あったよ」
ドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキ。
オレは今どんな顔をしているんだろう。
きっとすっごくブサイクな顔に違いない。
ここぞの場面でだけ錬の顔とチェンジできたらなぁ!! ってあり得ないことはいいんだって。
あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁオレの顔を見ないでくれ!!
声が出ないだろうが!!
えぇい! 奥の手だ!!
彩を抱きしめてしまえば顔が見られない! ってホントに抱きしめちゃったよーーー!!
これはもう後には引けない!!
「彩、好きだ!! だから抱きしめたし、キスした。酔った勢いとかじゃない!」
おーーーっし言ったぞ。これで胸のつっかえが取れた気がする。






ノーリアクション? 放置プレイ? 何か言ってくれよー!!
「信じられない! あんなメールしてくるからもう会いたくないって言われると思った」
・・・・・・・え?
あまりのことに抱きしめていた腕を離した。
えーっと、オレの告白についてのリアクションなの? それは?
「そんなこと言うわけないだろう! オレの今までの行動見て気づけよ!」
恥ずかしかった気持ちを忘れてオレは思わずムキになってしまった。
「だって突然避けるし、かと思えばキスしてくるし、それからまた避けるし・・・」
すんません、オレちょっと悪いかも。
「しかも、あたしの気持ちとっくに伝えたつもりだったし・・・。ホントは反則だけど」
ん? いつ彩がオレに気持ち言ったんだろう? 反則? 意味がわからん。
「どうせ忘れてるんだろうな、って思ってたけどね。まぁ、あの時すぐ調べられても困ったけど」
「え? いつ言ったの? ってか彩の気持ち教えてよ」
これ愛の告白か? いつもの会話が多少大胆になってるけど、話し方は友達じゃないの?(ムードはどこに?)
「アーティチョーク、欲しいって言ったよね?」
・・・・・・・アーティチョーク? いつの話だ?
あ!! あの日頬にキスされてスッカリそれ以外のことは頭から飛んでた。
「彩がキスなんかするから動揺して忘れたんだよ」
オレなんかすごい恥ずかしいこと言ってない?
「そうなんだ、気にしてないのかと思った」
・・・・可愛い。なんだその笑顔、すごい兵器だな!! オレに勝てる武器はないぞ。
「どうしたの?」
顔を覗き込むなーーーー!! 可愛いんだよ!! その顔も!!
恥ずかしくなって顔を下に向ける。
直視してるとオレの我慢が限界に達してしまう。
ここは車と言う密室空間ですよ!! お姉さん。
「あーーーっ、すっきりした! ここまで来る間ずっとドキドキしてたんだ」
一人で勝手にスッキリするなよ!
あ、オレの告白をなんだと思ってるんだ? ってか忘れてない?(心配になってきたけど・・・)
「で、オレの言ったことに対するリアクションは?」
今日の最大の議題なんですけど・・・。
「分かんないの? 鈍いよ、愁哉くん」
鈍いだとーーー!! オレがどんな気持ちで今日ここにいると思ってるんだ!!
完全にいじけてしまう。オレって一体・・・。
「そんなにいじけないの。愁哉くん☆」
そう言ってオレの頭を撫でる。
愁哉くん☆ ってオレは子供かい?
しかも可愛いんだよ!! その顔も!!
「ずるい・・・」
オレ完璧に彩のペースにのせられてる・・・。
可愛し、すごく好きだし、抱きしめたいし、ずっと側にいて欲しい。
こんなに好きなのに今まで我慢できていたのか不思議なくらいだ。(そして今も我慢しているのが不思議だ・・・。)
「アーティチョークの花言葉調べてみてよ、そしたら分かるよ」
彩が意地悪な顔をする。
家でネットで調べよう・・・。って今言えよ!! なんだよその花言葉って!!
「これで酷い言葉だったらマジで泣くよ、オレ」
子供か、こんな脅し一生で一回以上使いたくないな。
「そしたらなぐさめてあげるよ!」
なぐさめてくれなくていいから側にいてくれ。






彩のやつ、家まで送り届ける間ずっといつもの調子だったな・・・。
まぁ、いいか。あんな感じなら振られてからもすぐ元通りになるかもしれない。
文ちゃんの言った通りだ、すっきりはした。
ウソつきました・・・。無理!! すっきりしない! 保留状態だからか?(諦め悪い男だから?)
さっきからずっと悶々と・・・違った! モヤモヤするけど・・・。
でもモヤモヤしている方が返事を見て落ち込むよりずっといい。
怖い・・・返事を見るのがすごく怖い。
直接言えないってことはあまり期待するなってことだろうし。
でも知りたい! ほんの少しの期待だけはなぜかある。(自意識過剰・・・?)
うわーーーー! 本当に優柔不断だな、オレ!
今まで彩と近くなった1年前から何も変わってない。
変わらないとダメだ。
もし彩の答えがオレの望むものじゃなかったら今度こそきちんと諦めよう。
これでもダメならただのしつこい男だ・・・。
よし!! 見よう! パソコンに向かって座って1時間以上経ってるし・・・。
・・・うわ、キーボードを打つ手が震える。
えーっと・・・アーティチョークだっけ?
これで『大嫌い』とかが花言葉だったらマジで落ち込むな。
って打つ手を止めるな!! 怖がるなーー!! 
初めて神さまに祈ってるかもしれない。
こんな時だけ祈って叶えてくれるかはわかんないけど、何でも誰でもいいからオレの望みを叶えてくれ!!
絶対に絶対に大切にします!!
だからどーかお願いします!!
・・・・・・・・・・・・・。
いや、高望みはしないのでせめて友達でいられるような言葉でお願いします!!(気ぃ小さすぎ!?)


・・・よし、Enterっと。

って見れないよ!! (誰か変わりに見てくれーーーーー!!)
うわ、ヤバイ。変な胸騒ぎがする。
オレの野生のカンが「見ないほうがいいよ」っと言ってる気がする。(野性的ではないけど・・・)
・・・・・・・・・・・・・・・。
ダメだーー!! 今度はEnter押してから20分以上も見れていないぞーー!!

男らしく見るんだ愁哉ーーーーーーー!!
こんなんじゃ絶対もてないぞーーー!!
まず大きく深呼吸だ!! ・・・ダメだ息が吸い込めない。
しっかりしろ! オレ!

よし、3、2、1・・・・・・。



『・・・アーティチョーク』


『うそ。ごめん、ここにはないんだぁ』


『すっごくかわいい花言葉が付いてる花なんだぁ』


『内緒です、もったいなくて』


画面を見てからあの日の彩の言葉を一気に思い出した。走馬灯のようにってこういう事を言うんだろうな・・・。
「アーティチョーク」が欲しいといった彩の20才の誕生日。


思い出して顔が思いっきり緩む。
あいつ・・・やっぱり、可愛いな。
完全に負けてる、オレは・・・。
彩にはたぶん一生勝てない。(勝負の前からわかってしまう。)
でも勝てなくていい!!
・・・だから「ずっと側にいてほしい」。
そう彩に伝えたい。

・・・・・・・・・・・・・・・・。
って、恥ずかしいっつーのーーーーー!!
オレはいつからこんな恥ずかしいことを考える男になってしまったんだ!
何気取りだ? オレは? 一体誰だよ!! (ギャアーーーーーーーーー!!)
なんなんだ? オレは一体・・・ホントに彩といると調子が狂う!!
けど彩といる時間が何より欲しい時間だ。
ただ、オレの知らないオレが彩と過ごす時間でどのくらい登場するかと思うとちょっと怖いけど・・・。(主人公としてのイメージもあるしね☆)
でも楽しくて幸せな日々にはかえられない!


楽しくて嬉しくてドキドキして、友達のように和めて・・・。
一生でそうそうめぐり合える人じゃないと思う。
少なくてもオレの人生20年間で初めての人だと思う。(だから恥ずかしいって!! オレ!!)



今からそれを伝えに行こう。
恥ずかしがって顔を隠すオレはなんだかいつもと別人のもう一人の自分だけど、今度はきちんと彩に言いたい。
たまには甘い雰囲気になるのもいいんじゃないか?(ロマンチストのオレのために!!)





おっと、これで会いに行ってオレの見間違えだったら恥ずかしいなんてもんじゃないぞ!!
念のため、最後にもう一度彩の気持ちを画面で確認してからにしよう・・・。


せーのっ!












【アーティチョーク花言葉 そばにおいて】








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Update:09.24.2004

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■あとがき

アーティチョーク〜愁哉と彩の場合〜の最終話まで読んでいただき本当にありがとうございました。
嬉しいです! 感激です!
初の連載終了で私自身本当に嬉しいです!

この物語から7年近くの月日が経過したお話が「眠る記憶」です。
先に連載を開始したのは「眠る記憶」の方なのですが、あまりにも暗いお話なので
私自身ラブコメを書いて気分転換をしたいと思うようになり連載を始めました(笑)。
好き勝手動くキャラクター達に何度も妨害され中々思い通りに進まず、
予定していたラストシーンも大幅に変更になりました(笑)。
このラスト、いかがだったでしょうか?
このお話を読んでアメフトに興味を持っていただいたり、
少しでも楽しいひと時を過ごしていただけたのなら本当に嬉しいです。
(実際のアメフトは本当にカッコイイですよ!!)
これからも小説を書いて連載していきたいと思っております。
今後ともかりん&ゆえの「なつのゆき」をよろしくお願いします。

かりんでした。

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