■第12話 フキノトウ 〜花言葉は 真実はひとつ〜 |
「ごめん・・・オレ好きな人がいるんだ。文ちゃんに聞かれた時ウソついた」 文ちゃんに王座決定戦の後告白された。 試合に夢中で競技場の出口に立っている姿を見るまで、来るって言ってたこともスッカリ忘れていた。 「ホントは前から愁哉くんのこと知ってたんだ。高校のアメフトの大会に友達と矢沢くんの応援に行った時から・・・。その時、相手チームだった愁哉くんに一目ぼれしちゃったんだ。それで無理言ってあの会を開いてもらったの」 矢沢の高校と試合した時からってことはオレが3年生の全国大会の決勝だ。 もう2年以上前だ。 そんなに前からオレのことを思っていてくれたと知って正直嬉しかったし、少し迷った。(オレってやつは!!) 彩に似ているからじゃなくて、顔を真っ赤にしてそう言う文ちゃんの姿はすごく可愛かった。 オレがオレじゃなかったら、OKしていたかもしれない。(ぶっちゃけ、かなり悔いが残ってるし・・・) でも、オレはオレだからこの返事以外はできなかった。 「さっきの試合見てて、ちょっと気づいたんだ。愁哉くんが試合の直後笑顔で見てた人でしょ?」 少し下を向いてオレの返事にそう答えた。 「うん・・・諦めようと何度も思った人なんだけど、やっぱり諦められなくて」(ってかなんであれだけでわかるんだろう・・・) 苦笑いしながら言った。 ダメだな、もっとスマートな言い方をできればいいんだけどオレは無理だ。 なんでこんなオレを好きになってくれたんだろう。 「その気持ちわかる。・・・でもあたし愁哉くんに実際に会えて、少しの間だけど幸せな気持ちで過ごせた。伝えて良かった! これでやっとスッキリできる」 そう言って笑った顔はホントに可愛かった。 こうして見ると彩に似ていないな。 文ちゃんは彩より年下なのに大人びた顔をしてる。 「ありがとう・・・。オレのこと好きになってくれて。ホントにごめん」 ごめん、もっと早く言っていれば良かった。 でもホントにありがとう。 文ちゃんはオレが彩のこと好きだって気づいたうえで告白してくれた。 オレは・・・・。 『オレに最高の試合をさせてくれたから、いいことを教えてやるよ』 『はっ? はい・・・』 『彩とは2ヶ月も前に別れてるよ』 一体どうしてなんだろう。 2ヶ月前? ・・・・・・あの合コンの日か? オレに会いに来たってことは辛かったからじゃないのか? 彩は雄斗さんが好きなんじゃないのか? 女心はさっぱりわからん!! 「今日錬さんの従兄妹が試合見に来てて会ったんですけど、メチャメチャかわいいんっすよ!」 健志朗はものすごい笑顔でそう言った。 試合の後『こころ』に錬、健志朗、やっちゃん、矢沢の5人で飲みに来た。 ・・・・? 錬の従兄妹って高校3年生の最後の試合に来てた春(しゅん)ちゃんか? 確かあの時小学4年生じゃなかったっけ? ってことは・・・今小学6年生。 ・・・・・・・・・・・・よほど女に飢えてるのか? それともロリコン? ちょっと心配になってきた・・・。 「前に会った時も中々可愛いと思ったんっすけど、2年たってさらに可愛くなってて!!」 やっぱり春ちゅんのことらしい。 「オレあの子が高校生になったら付き合ってもらえるように予約しといて下さい!!」 健志朗が錬に詰め寄る。 「・・・・・・春に言っておくよ」 錬はすごい嫌そうな顔でそう言った。 「でも、健志朗矢沢の友達と付き合いだしたんでしょ〜? さっそく浮気していいのか〜?」 「はぁっ!?」 やっちゃんの一言でオレも錬も同時に大きな声をあげてしまった。 「残念だけど、さっきの約束は無効だ・・・」 錬は健志朗の肩に手をおいて嬉しそうにそう言った。 なんで嬉しそうなんだろう? シスコンみたいなもんか? 「誰情報っすか? 泰広さん!!」 動揺を隠せない様子で健志朗はやっちゃんに聞く。 やっちゃんは笑っているだけで、それ以上何も言わずにビールを飲み始めた。 健志朗・・・小学生相手に浮気するとは・・・。(いつも通りその彼女とも続かないなっ! ちょっと安心☆) しばらく黙った後にひらめいたように健志朗が声を上げる。 「分かった!! はつみちゃんじゃないっすか?」 「ブーーーーッ!!」 健志朗の言葉に動揺したのかやっちゃんがビールを口から噴射した。 「えっ〜?! 何が〜?」 やっちゃん、後輩の言葉にこんなに動揺するなんて・・・。 でも、ちょっと聞きたい。 やっちゃんの恋愛話は一回も聞いたことがない。(健志朗頑張れ〜!!) 「はつみちゃんと前から知り合いだったんすよね? どういう知り合いだったんすか?」 健志朗がオレの心の声をキャッチして?さらに攻撃をしている。(どうでもいいが先輩に対しての礼儀はわかってねーな) 「地元の知り合いだよ〜。まぁオレのことはいいから〜」 やっちゃんはニコニコ笑顔でそう言った。 いつも笑ってのんびり話すやっちゃんの考えてることを読むのはすっごく難しい。(ってか無理!!) 顔だけ見ればかっこいいのに・・・いつもこんなんだから女の子も気づかないんだろうな。 「そう言えば愁哉さんはどうなんですか?」 !?!?!?!? 矢沢!! 突然オレにふるなよ!! 「そうっすよ〜!! 文ちゃん可愛いじゃないっすか。愁哉さんっていつもクールで表情が変わらなくて良くわかんないっすよー!」 ・・・・・・・・? 健志朗、今なんて言った? 聞き違いか? 「オレ、表情変わんない?」 彩や錬にはあんなにホイホイ当てられるオレが? 「オレ2年近く愁哉といるけど、最初かなり愛想のないやつだと思ったもんなぁ〜」 やっちゃんの言葉に健志朗が大きく頷いた。 「そうっすよ、せっかく憧れの人に会えたと思ったのに素っ気なくて最初泣きましたよ〜!」 「うそつけ・・・」 お前はかなりしつこく話して来ていたぞ。 「泣いたのはウソっすけどね。錬さんくらいじゃないっすか? 愁哉さんの表情読み取れるの」 「オレも最初わかんなかったよ」 ウソだろぉ・・・。(でもちょっと嬉しい・・・) 「でも最近かなりオレもわかるようになってきましたよ! 努力の賜物っすね」 努力しないとダメなくらいなのか? オレは。(しかもわかってるなら口の聞き方直せ!) じゃあ、なんで彩はオレの気持ちを言い当てるんだろう。 たったの1年半。話すようになってから1年も経っていない。 急に胸がドキドキしてきた。 気持ちが溢れて止まらくなってきた。 「もう一人いるよな、愁哉」 錬が意地悪な顔で言った。 エスパー錬め・・・言い当てるのは止めてくれ。 「誰っすか? オレの知ってる人っすか?」 健志朗が錬に詰め寄って聞いている。 「まぁ、まぁ。健志朗はまず彼女の心を理解した方がいいんじゃないか〜?」 やっちゃんは笑顔で錬を援護。 さすがディフェンスの要。(今日の試合も大活躍!!) オレはどうしたいんだ? 『その気持ちわかる。・・・でもあたし愁哉くんに実際に会えて、少しの間だけど幸せな気持ちで過ごせた。伝えて良かった! これでやっとスッキリできる。』 オレも彩に会ってから毎日幸せで、ドキドキして過ごしてきた。 普段なら絶対しないような自分でも驚くことをした。 雄斗さんはなんでオレにあんなことを言ったんだろう。 ・・・・・・・・・・・・・。 オレは雄斗さんが大切だから諦めようとしたのか? それならなんで裏切るようなことをした? 話したかった、会いたかったんだ、触れたかった。それがオレの気持ち。 ごまかそうとしてごまかせなかった気持ち。 大切な気持ちに気づいてしまった。 オレは彩が欲しかったんだ。ずっと・・・。 |
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Update:09.17.2004
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