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「やっぱりはっちゃんだ〜! すっかり大人になっているから自信なくてさ〜!」
顔を上げたと同時に聞こえてきた声。
「やっちゃん・・・」
その声はあたしがずっと待ち望んでいた人の声。
会いたかった人の声。
でもどうしてここにいるんだろう・・・。








「大学からアメフト始めたんだ〜。高校のラグビー部と違って美並は強豪だから大変だけど、楽しいよ〜!」
やっちゃんの笑顔。
すごく見たかった笑顔。
「そうなんですか、じゃあ毎日忙しいんですか? 大変ですね。頑張って下さいね―――」
言いたい事がたくさんあるのに、いざやっちゃんが目の前にいると言葉が出てこない。
こんな話をしたかったんじゃない。
・・・嘘。これはこれですごく嬉しい。待ち望んだ時間だ。
でも伝えたかったのは、1番に伝えたかったのは違う。
また後悔するよ?
今度はきちんと気づいてるでしょ? 自分の気持ち・・・。













高校1年生。11月。


「え? はい、電話ボックスですか? わかりました見てきますので少々お待ちください」
今はあたしの休憩中。
やっちゃんがレジで応対していたから事務所の電話をあたしがとった。
保留にして受話器を置く。
「どうしたの〜?」
応対の終わったやっちゃんがカウンターから事務所を覗いている。
「今、駐車場にある電話ボックスにバックを忘れたって連絡があったんです。ちょっと見てきます」
「はっちゃん今休憩中でしょ〜? お客さんもいないしオレ行ってくるからゆっくりしてて〜」
やっちゃんは笑顔でそう言うと小走りで電話ボックスに向かう。
なかったらどうしよう・・・。
大金がハンドバックに入ってるって言ってた。
もしなかったらなんて言おう。
ショックどころの騒ぎじゃないよね・・・。
事務所から顔を出すと駐車場のやっちゃんと目が合った。
やっちゃんは両手で大きく○を作っている。その右手にはバックも握られている。
あったんだぁ! よかったぁ!
「もしもし、ありました。・・・・・はい、お待ちしております」
「はっちゃん、良かったね〜」
満面の笑みを浮かべて事務所に入ってくる。
「はい、お客様もすごい喜んでる感じでしたよ!」
あたしも嬉しくって笑顔になる。
やっちゃんは満足そうにあたしの頭をくしゃくしゃっと撫でる。
くしゃくしゃは今まで何回してくれたかわかんないけど、飽きることは全くない。
むしろ嬉しくてたまらない!





「本当にありがとうございました!! あのお礼に・・・」
そう言ってあたしのお母さんくらいのお客様はサイフを取り出し始めた。
え? 手には1万円札が何枚か握られてる。
これは・・・貰えないよ〜!! 


「いえ、僕はただ電話ボックスに行っただけですから〜」
優しい笑みを浮かべてやっちゃんはそう言った。
「あたしも、ただ電話に出ただけですから」
やっちゃんが同じ気持ちで嬉しい!


「でも、本当に助かったんです。なんとかお礼できないでしょうか?」
本当に嬉しそうにお客様は言う。
でもお礼って言われてもなぁ・・・。
特にあたしなんて何もしてないし。
「いえ、本当に結構ですよ〜。お気になさらないで下さい〜」
すごく優しい笑顔でやっちゃんが言う。
人を不快にさせない笑顔の達人だな、やっちゃんは。
「そうですか・・・あっ、じゃあジュースを買わせて下さい。それならいいですよね、ただの差し入れですから」
お客様はそう言うと冷蔵庫から20本くらいの缶コーヒーをレジに持ってきた。
・・・これは断るのは失礼だよね。
受け取らなかったらきっとこのお客様がずっと気にしてしまう。
「ありがとうございます。では店の者といただきます〜」
やっちゃんは笑顔でそう言いながらレジを打つ。
あたしはその隣でお客様にお礼を言う。
「本当にありがとうございました」
お客様は頭を深く下げてお店を後にした。
「はい、はっちゃん。ごめんね〜、オレ勝手に決めちゃって・・・」
缶コーヒーをあたしに手渡しながら申し訳なさそうに言う。
「あたしもやっちゃんと同じこと考えてましたから! だからすっごく嬉しいです!」
コーヒーを受け取ってあたしは自然に笑顔になった。
やっちゃんの優しさとお客様の気持ち、それがすっごく嬉しかったから。
「20人も人いないから、1本ずつ持って帰って1本今飲んで、残りは事務所の冷蔵庫に入れておこう〜。他の人には内緒ね〜」
「はい、内緒です」
嬉しそうに笑うやっちゃん。
あたしも嬉しいよ、やっちゃん。
すごく嬉しいよ。





この持って帰る1本は当分飲めそうにないな。
この缶コーヒーは人生で最高の優しさがこもったすごく価値のあるものだ。
お客様の笑顔と、やっちゃんの笑顔。
その二つの笑顔と一緒にこの缶コーヒーはあたしの中で忘れられない記憶になる。
そんな気がする。
人の笑顔ってすごく素敵だと思う。
今日ほどそう思ったことはない。
あたし・・・人の笑顔がたくさん見れる仕事がしたい!










高校1年生。12月。


「やっちゃんは、卒業したらどこの大学に進学するんですか?」
今日は12月31日だけあってすご〜く暇。
外はなんだか大雪だし、これは誰も来ないよね・・・。
「オレは美並山学園志望なんだ〜」
美並山学園!? 
「やっぱりすごいですね! あたしの高校からじゃ上位の人でも難しいですよ!」
さすがこの街1番の進学校に通ってるだけのことはあるなぁ。
「すごくないよ〜、志望校なだけだもん。受かんないと意味ないしね〜」
イヤイヤ、あたしが言ったらギャグになってしまう。
ギャグにならないことがすごいよ!
「はっちゃんは〜? 何か夢ある〜?」
「私は看護士になりたいです」
つい最近やっと見つけたあたしの夢。
「そうなんだ、きちんと決めてるんだね〜。でもどうして〜?」
「この前あのコーヒーをくれたお客様とやっちゃんの嬉しそうな笑顔見て、こんな風に誰かに笑ってもらえる仕事がしたいなって。色々考えて看護士をしてる母の話を聞いてこれだって思ったんです」
あの日のことがすごくすごく嬉しかったから、やっちゃんの笑顔がすごく嬉しかったから。
「そっかぁ〜。でもオレの笑顔なんて安いよ〜。はっちゃんならもっとたくさんの人たちを笑顔にできるよ〜。うん、向いてると思うよ〜」
「ありがとうございます! 頑張ります! あの、でもやっちゃんの笑顔あたしの中ではすごく価値があります! なんか温かくて幸せな気持ちになります! 素敵なお兄さんが出来て嬉しいです!」
思わず力説してしまった・・・。
恥ずかしい・・・。
「はっちゃんみたいな妹が出来てオレも嬉しいよ〜! オレ弟しかいないから嬉しいな〜」
笑顔で頭をくしゃくしゃってしてくれる。
すごく嬉しい!
・・・でもなんだろう。自分で言ったお兄さんって言葉に違和感を感じるな。
ずっとお兄さんみたいだって思っていたのに・・・なんでかな?





「雪、すごいね〜。はっちゃんちゃんと帰れる〜?」
「あたしはすぐ裏だから大丈夫です。やっちゃんこそ自転車、大丈夫ですか?」
あたし達のバイトの始まる時間はまだ降ってなかったもんなぁ。
たった5時間でかなり積もってる。
「オレはね〜、大丈夫だよ〜。転ぶの慣れてるし。気をつけてね〜」
「あはは! やっちゃんも、気をつけて下さいねー! 良いお年を〜!」
やっちゃんに手を振る、やっちゃんは自転車を倒しそうになりながらも手を振返してくれた。












高校1年生。1月。


「はっちゃん、休憩入ってい〜よ〜」
「はーい!」
お弁当どうしよう、相変わらず優柔不断でイヤになるなぁ。
うーん。ジュースはいつものグレープフルーツでいいとして・・・。
「はっちゃん〜、今日もいつものジュース〜?」
休憩を終えてやっちゃんがエプロンを付けながらカウンターに出てきた。
「はい! でもお弁当が決まらなくて・・・」
ホントにどうしよう。
「ジュース、オレの残りでよかったら飲まない? なんか今日お腹いっぱいで半分以上も残っちゃって〜」
「いいんですか? でもグレープフルーツジュース好きなんですよね?」
バイトのたびに飲んでるのに・・・。
「うん、はっちゃんさえ良ければ〜」
わーい! なんか本当に兄妹みたいだな〜!
とりあえずお弁当をレンジに入れてっと。
「ありがとうございます、いただきまーす」
事務所のイスに腰をかけてテーブルに上がってるジュースに手をつけた。
・・・・・・!?
なんだろう、手をつけた瞬間から急にドキドキしてきた。
まさか間接キスだからとか思ってるのかな? クラスの男子とは普通に出来るのに?
なんでこんなに緊張してるのーーーー?
自分で自分の気持ちがわかんないよー!
とりあえず口を付けてみたら何か変わるかも。
・・・!!!?
信じられないくらい自分の顔が赤くなっていくのを感じる。
なんで!? 一体自分に何が起きてるんだろうか?
やっちゃんは、あたしにとってお兄ちゃんみたいな存在なのに。


「はっちゃ〜ん、お弁当温まったよ〜」
ドキン!?
やっちゃんの声に心臓が大きな音をあげる。
「はーい、ありがとうございます! 今行きます」
恥ずかしくて顔を上げれなくて下を向いたまま返事をしてしまった。
変だと思われたかな・・・。
「いいよ〜。オレ持ってくよ〜。はいお弁当〜」
・・・・・・・・・・。
ダメだ、顔が真っ赤だ。
でも下を向いてたら変に思われるかもしれないし・・・。
「はっちゃん〜? 顔赤いよ〜。風邪?」
心配した顔をして手をおでこに当ててくれる。
ドキン!?
また大きな音をたてる。
「ちょっと熱あるかもよ〜。最近寒いもんね〜。忙しくなったら呼ぶから事務所でゆっくり休んでな〜」
「は、はい」
そっかぁ、最近急に寒くなったから風邪引いてたんだ。
それでこんなにドキドキしたんだ。
おっかしいと思った。
けど、さっきおでこに触れたやっちゃんの手温かくて気持ちよかったなー。
なんでか家族と一緒にいる時みたいにすっごく安心した。












高校1年生の2月。


今日でやっちゃんは『サクラ』をやめる。
3月のシフトが配られたときにやっちゃんの名前が無くなってたから驚いた。
理由は来年の受験に備えてアルバイトと部活と勉強の3つをやるのは無理だと判断したから。
今までそんな話全然してなかったのに・・・。
でも当たり前か・・・美並山学園ならレベル高いし仕方ないんだ。




「はっちゃん、今日は最後だから家まで送るよ〜」
笑顔でまたあたしの頭をくしゃくしゃってする。
「えっ! でも・・・やっちゃんの家、逆方向ですよね?」
あーーー! せっかくなんだから送ってくださいって言えばよかった。
今日になって急にやっちゃんが辞めるって知ったからか、あたしなんだか変だ。
なんだかすごく寂しい。もうサクラに来てもやっちゃんがいないから寂しいんだ。
「い〜よ〜。送らせて〜」
やっちゃんがくれた最後のチャンス。
いつか『やっちゃん』って言いたいのに言えなかった時も同じようにチャンスをくれたな・・・。
このチャンスを逃したら後悔する。
「じゃあ、お願いします!」
嬉しくって思わず笑顔になる。
でも嬉しいけど・・・少し気持ちがモヤモヤする。
やっちゃんはお店の横に自転車を止めている。そこからさらに50メートル向こう側を左に曲がるとあたしの家。
一緒に歩けるのはたった2〜3分。
考えてみるとサクラ以外でやっちゃんといるのなんて初めてだ。





あれ? お店を出た後急に心臓がドキドキしてきた。
なんでだろう・・・。
外の気温はマイナスなのに顔に熱をもってるみたい。
一緒に帰るのが初めてだから? 
それともやっちゃんと二人だから緊張してるのかな?
うーん。でも、二人なのは今まで週に2回もあったし緊張するわけないよねー。
・・・よくわかんないや。




「あはははは、やっちゃん似てないですよー!」
「え〜! じゃあね〜『福嶋くん、もっとハッキリお話ししないとダメよ!』」
「あははは、今のは奥さんですかー? 言葉しか合ってないですよー」
やっちゃんの話は店長や奥さんのモノマネとか全然似てないのにすごく楽しい。
一緒にいる時間がすごく楽しくて安心して嬉しかった。
あ・・・もう家がすぐそこに見える。
・・・・・・・・なんでだろう、家に着いてほしくない。
外はすごく寒いのに、家に帰りたくない。この時間を終わらせたくない。
いなくなるのは寂しい・・・けど、どうしてこんな気持ちになるんだろう。
やっちゃんはバイトは辞めちゃうけど同じ街に住んでるんだからまた、きっとサクラに遊びに来てくれる。
それに家だってそんなに遠くないからどこかで会えるかもしれない。
なのになんでこんなに胸がザワザワ言うんだろう。
何か大切なことを忘れてる気がする。
だけど、一体何を忘れているんだろう。



「ここです、ありがとうございました」
着いてしまった。
普段でさえやっちゃんといると時間が過ぎるはあっという間だったけど、今日はいつもに増して早く感じる。
「ここなんだぁ。ホントにサクラに近いね〜」
わぁ・・・やっちゃんの笑顔。やっぱりこの笑顔、好きだな。
「じゃあ、元気でね〜」
いつもみたいに頭をくしゃくしゃってしてくれる。
「はい、やっちゃんも勉強頑張って下さいね」
くしゃくしゃがすごく嬉しいのに、すごく寂しい。
やっちゃんが手を振ってあたしの側から離れる。
なんでだろう・・・すごく寂しいよ。
あたしもやっちゃんに手を振りながら玄関がある2階への階段を上がる。
家は1階が駐車場だから2階に玄関がある。
そこから振り向くと自転車でもと来た道を戻って行くやっちゃんが見える。
急に涙が出てきた。
どうして泣いてるんだろう・・・もう2度と会えないわけじゃきっとないのに。
でも・・・もう1回だけやっちゃんの顔が見たい。
・・・振り返ってくれないかな。
どうしてだろう、ますます胸がモヤモヤする。
やっちゃんのことを引き止めたい。
さっきから引っかかってる大切なことって一体なんだろう・・・?




・・・・・・・・・・・・!?
「はっちゃん、看護婦さんになれるといいね! おやすみ〜」
あたしの心の声が聞こえたのかな?
振り返ってあたしに笑顔で手を振ってる。
「はい! 頑張ります。あの! すごく楽しかったです! だから少し寂しいです! でも頑張ってください! 応援してます! おやすみなさい!」
嬉しくって自然と笑顔になる。
涙も止まってモヤモヤがふっと消えてなくなった。
なんだかすぐにでもまたサクラに行けば会えるような気がしてきた。
寂しくてなんだかモヤモヤした日がやっちゃんの笑顔ですごく素敵な日になった。















あの日から家まで送ってもらったのを最後に、あたしはやっちゃんに1度も会えることはなかった。
考えてみたら同じ街に住んでいたのに偶然に会ったことなど1度もなかった。
サクラには何度か遊びに来てたらしいけど、有希ちゃんも受験のためにバイトを辞めたりしてシフトが何回も変わったせいかあたしのいる日には1度も来なかった。
それでもやっちゃんに会えるとあたしは疑っていなかった。
すごく寂しくて会いたかったけど、信じてた。
やっちゃんが美並山学園に合格しこの街を出て行った、と奥さんから聞くまでそう信じてた。















「え〜、せっかく盛り上がってきたところですが時間が来てしまったのでとり合えずここはこれで終わりということで」
今日の合コンを企画してくれた矢沢くんが終わりを告げる。
彼は看護学校の友達、江実の高校の同級生でやっちゃんや文が会いたかった人のアメフト部の後輩。

・・・・・・・・・・・・。
やっちゃんとの時間もこれでおしまい。
結局あたしは何も言えなかった。
この街でもし偶然にやっちゃんに会えたら言いたいことがたくさんあった。
たくさんあったのに・・・あたしは何も言えないまま時間だけが過ぎていった。
彼との時間はいつも早くてあっという間に過ぎてしまう。
「この後カラオケに行こうという企画がありますので、是非みなさん参加してくださいねー」
え!? この続きもあるんだ! 
でも・・・どうしよう。今11時少し前かぁ、家に帰れる最終の電車まであと30分もない。
「矢沢、悪いけどオレ帰るから〜!」
えっ! やっちゃん帰ってしまうんだぁ・・・。
どうしよう・・・それなら一緒に帰ろうって言ってみようかな。
あ、でもさっき駅の反対方向に住んでるみたいなこと言ってたよね・・・。
迷惑だったら困るよね・・・部活で疲れてるだろうし。
「江実、ごめんね。電車まで時間ないから帰るよ」
このまま帰っていいの?
「え〜! 明日開学記念日で休みなんだから、泊まっていけばいいじゃん」
・・・泊まる? ってどこに? 今日のメンバーだとこの辺りに住んでる人いないし・・・。
「まさか・・・美並の人の家・・・?」
「当たり前じゃん! せっかくの合コンだし、今日かっこいい人多かったしさ。もう2度と会えないかもしれないんだから、後悔しないようにしないとね! だから泊まる!」
おいおい・・・。
「でもお父さん心配するから今日は帰るよ」
まぁ、ホントは有給とって北海道に帰ってるからウソだけど・・・。
「そうなんだぁ、じゃあまた明後日、学校でね!」
「うん、ごめんね! 楽しんできて」
江実や文が矢沢くんたちと盛り上がってる横で帰り支度をする。





『当たり前じゃん! せっかくの合コンだし、今日かっこいい人多かったしさ。もう2度と会えないかもしれないんだから、後悔しないようにしないとね! だから泊まる!』
前半と最後はともかくとして、江実の言うとおりだよね。
あたし・・・また後悔するの?
あの時とは違う、今度は自分の気持ちはハッキリしてる。
やっちゃんが好きってきちんと分かってる。
そうだ! 別に一緒に帰らなくても呼び止めて伝えればいいんだ。
それならきっと迷惑にならない。
・・・気持ちは迷惑かもしれないけど・・・。
って最悪の状況を考える前に行動しよう!
・・・・・・・・・・・・あれ? やっちゃんがもういない。
どうしよう・・・でもそんなに時間たってないから近くにいるかもしれない。
・・・あっ! トイレの前に立ってる人、江実がずっと話し掛けてた宮坂さんって人だ。
ここから出口に行くにはトイレの前通らないとダメだから知ってるかも。
「あの・・・やっ、福嶋くんってもう帰りましたか?」
あ・・・少し驚いた顔してる。
今日4時間近くも一緒にいたのに一言も話してないもんなぁ。
「酔ったから少し風に当たるって言って外に出て行ったよ」
そうなんだぁ。よかったぁ・・・。
でも・・・帰ってないってことは。
「もしかして福島くんと一緒に帰る予定ですか?」
「うん、オレと同じアパートに住んでるんだ。今トイレにいる奴と3人で帰るために待ってくれてるんだよね」
そうなんだ・・・もう帰るんなら時間使わせたら迷惑だよね。
「そうですか・・・ありがとうございます」
仕方ない、帰ろう。
あたしがウジウジ悩んで中々言わないからチャンスがなくなってしまったんだ。
自業自得だ・・・。
「あの! はつみちゃんで良かったかな?」
「・・・はい」
「やっちゃん、連れてってもいいよ。別にオレとかは毎日部活で会ってるから、気にしないでいいよ」
・・・・・・。
宮坂さんってすごい! でも恥ずかしいなぁ。なんでわかったんだろう。
「ありがとうございます! 少しだけお借りします!」
宮坂さんに頭を下げて出口へ向かう。





今度こそ絶対に後悔しない。
後悔したくない!






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Update:10.08.2004





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