<<戻(top) <<小説 <<目次

 









やっちゃんだ・・・。
お店のすぐ横にあるベンチに腰掛けてる。
あたしは、ずっとやっちゃんのことお兄さんだと思っていた。
いつも優しくて、笑顔で、なのにすごく強いあたしを守ってくれるお兄さん。
だから実は顔がすごく整っている美形だってことに気づいたのは、高校の友達に指摘された時。
一緒にバイトしてる時には全然そんな風に思ったことなかった。
でもこうやって静かにベンチに腰をかけてるやっちゃんを見ると友達の言ってた意味がわかる。
アメフトを始めたからかな・・・? 体もあの頃よりがっちりしたように見える。
きっとすごくもてるんだろうな。
もしかしたら大学で素敵な彼女を見つけているかもしれない。
だけど・・・あの気づいた日のような思いだけはしたくない。
何も言えないままで後悔したくない。













高校3年生。9月。


「どうしてそんなにあの街の看護学校にこだわるわけ? 隣町にだって看護学校あるじゃないか」
今年の4月から付き合いだした彼、高松圭介は隣町以外の看護学校以外に進学することを反対している。
毎日のように質問されても同じ答えしかできないし、その繰り返しの会話に少し嫌気が差してきた。
「だってお父さんの単身赴任先だよ? 前帰ってきたとき寂しいからこっちに来ないかって言われたから行こうかなって」
『ずっと好きだった』って言われて、嬉しくてほとんど話をしたことのなかった圭介の告白をOKした。
告白されるのなんて初めてだったし、クラスでも人気があるカッコイイ人だったから正直嬉しかった。
こんな風に恋愛が始まるのだと思った。
「だからって・・・お父さんだっていつまでも単身赴任先にいるわけじゃないんだろ?」
「そうだけど・・・でもあと最低2年は向こうにいるし」
自分でもよくわからないけど、どうしてもそこに行きたい。
あの街には何かがある気がする。
心がざわざわして、いかなくてはいけない気がしている。
それは・・・お父さんがいるから?
「はつみはオレと会えなくなってもお父さんに会えることのほうが嬉しいんだ」
「そうじゃないよ・・・そうじゃないけど、あの街に行きたいの」
心がざわざわしているなんて言ったらきっと馬鹿にされる。
やっちゃんならきっと分かってくれる気がする。
「オレは絶対イヤだよ。反対だよ。もしどうしても行くなら、別れよう」







「それは絶っ対はつみが悪いよ。どうしても向こうじゃなきゃいけない事情があるなら別だけど、はつみの場合違うでしょ? 圭介に会えなくなっても寂しくないの?」
「寂しい・・・のかな? でも・・・実際離れてみないとわかんないよ」
親友の奈緒はあたしと圭介が付き合うきっかけを作った人。
しかもやっちゃんと同じ中学校で、同じ委員会だったとかでよく知っていた。
やっちゃん中学時代の話を色々聞いているうちに、高校で1番の親友になった。
「まぁ、確かに離れてみないと実感わかないかもしれないけど・・・でもどうして隣町のじゃダメなわけ?」
「なんていうか・・・胸がざわざわするんだよね。あの街に行きたいって思うんだ。だから・・・かな」
「胸がざわざわって・・・誰か会いたい人でもいるの?」
「なんで?」
「え? だって、あの街に行きたくて胸がざわざわするんでしょ? だからそうなのかなって」
あの街にいる会いたい人・・・?
「・・・はつみ、あんた本当に圭介のこと好きなの?」
・・・? 
「好き・・・だよ。だって圭介はクラスで人気があって面白くて一緒にいて楽しいし。顔も中々かっこいいし」
あんな風に同じ事を聞いて困らせなければ最高なんだけど・・・。
「はぁ? はつみ・・・それ、好きって言わないんじゃないかな?」
「え? なんで?」
「じゃあ、前一緒にバイトしてた福嶋さんはかっこいいし、優しい人だよね。好きだったんだ?」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・?
「えー? やっちゃんは別にかっこよくなかったよ。すっごく優しくていい人だったけど」
やっちゃんはいつも笑顔でくしゃくしゃってする優しいお兄さんだ。
「かっこいいじゃん! なんかいっつも笑顔でのんびりしてるけど優しいし顔は美形だし!」
「えーーーー?! そうなの・・・?」
「そうだよ!」
全然気づかなかったよ・・・。
だって初めて会ったときも自転車で転んでずぶ濡れで・・・。
「そういえば・・・福嶋さんの行った美並山学園ってはつみの行こうとしてる看護学校と同じ街じゃなかった?!」
「そうだけど・・・」
それがどうかしたのかな・・・?
「福嶋さんがいなくなるってわかった時、寂しかった?」
「寂しかったよ! すっごく! もう『サクラ』に行っても会えないんだなって」
だから家まで送ってもらってすごく嬉しかった。
また会えるって信じてたし、そうであってほしかった。
けどあれから1度も会えなくて、ポッカリ穴が空いたみたいに寂しかった。
そんな時、圭介がずっと好きだったって言ってくれて嬉しかった。



「はつみあんたさっき『実際離れてみないとわかんないよ』とか言ってなかった?」
「言ったけどそれは圭介の場合で、やっちゃんの時は離れるってわかってからすっごく寂しかったよ」
・・・・・・・・・・・・・・? あれ? 
なんで離れる前から寂しいって思ったんだろう。また会えるって思ってたのに・・・。
「あんた福嶋さんのことが好きなんじゃないの?」
「え・・・? えーーーーー!?」
あたしがやっちゃんを好き?
「まさかっ・・・だってずっとお兄さんみたいだなって思ってたし」
あれ? なんで奈緒ため息つくの?
「・・・でも他人でしょ? 本当の兄貴じゃないんだから・・・」
「やっちゃんもあたしのこと妹って言ってたし」
「はつみは違ったんじゃないの? だから寂しかったんじゃない?」








そう、なのかな・・・?
だから何かが胸にひっかかってたの?















『同じハンガーにエプロン掛かってるから名前は知ってたんだぁ〜。はっちゃんって呼んでい〜い?』
『今日の記念に、オレのこと『やっちゃん』って呼ばない〜?』
『ホントにごめん・・・』
『20人も人いないから、1本ずつ持って帰って1本今飲んで、残りは事務所の冷蔵庫に入れておこう〜。他の人には内緒ね〜』
『そっかぁ〜。でもオレの笑顔なんて安いよ〜。はっちゃんならもっとたくさんの人たちを笑顔にできるよ〜。うん、向いてると思うよ〜』
『じゃあ、元気でね〜』
『はっちゃん、看護婦さんになれるといいね! おやすみ〜』











あの言葉達が全部大切な思い出なのは・・・やっちゃんが好きだったから?










『福嶋くんに手を引かれて外に出る。
なぜだかすごくドキドキして心臓が飛び出しそうになった。』
『・・・でもなんでだろう、二人の会話も笑顔も今日は嬉しくない。見ていると胸が少し苦しくなった。』
『子供の頃初めて貰ったプレゼントみたいに、すごく幸せな気持ちになった。』
『でも手がすごく心地良くて、ずるいあたしはもう少しこのままでいたいな、なんて思ってしまった』
『なんだろう、瞬間急にドキドキしてきた。
まさか間接キスだからとか思ってるのかな? クラスの男子とは普通に出来るのに?
なんでこんなに緊張してるのーーーー?』












『サクラ』でのやっちゃんとの時間が忘れられなかったのは、やっちゃんが好きだったから?















『どうして泣いてるんだろう・・・もう2度と会えないわけじゃきっとないのに。
でも・・・もう1回だけやっちゃんの顔が見たい。
・・・振り返ってくれないかな。
どうしてだろう、ますます胸がモヤモヤする。
やっちゃんのことを引き止めたい。
さっきから引っかかってる大切なことって一体なんだろう・・・?』















あ・・・わかった・・・。
あの時、あたしが忘れた大切なものは・・・。
















「ちょっと・・・はつみ何泣いてるのー? ごめん、なんか言い過ぎたね」
「奈緒・・・あたし・・・」
「どうしたー? なんかよくわかんないけど、ごめんねー!」
違う・・・奈緒は何も悪くない。
「あたし・・・奈緒に言われるまで・・・全然、気づかなくて・・・。圭介に・・・酷いことした」
本当に酷いことした。
どうしてこんなに簡単なことに今まで気づかなかったんだろう。
奈緒はわけがわからなくて、何度も謝ってくれた。




やっちゃんが悪くないのに謝ってくれた日のことを思い出した。








もう1度会いたい。
あたし・・・やっちゃんが大好きだったんだ・・・。













奈緒の言葉でやっと気づいた気持ち。
あの日からずっとやっちゃんに会いたかった。
あんなに会いたかったやっちゃんが今、目の前にいる。
もう泣いて後悔することだけはしたくない。




「やっちゃん!」
「はっちゃん〜。あれ? カラオケ行かないの〜?」
やっちゃんはビックリした顔した後いつもの笑顔になった。
「カラオケは行きません。あの・・・」
勇気を出すんだ! さっきの江実の言葉を思い出して勇気をもらおう。
『当たり前じゃん! せっかくの合コンだし、今日かっこいい人多かったしさ。もう2度と会えないかもしれないんだから、後悔しないようにしないとね! だから泊まる!』
今度こそ、2度と会えないかもしれない。
そう後悔しないように・・・。
自分の気持ちを正直にぶつけるんだ!!








「あの! やっちゃんの家に泊めてください!!」
・・・・・・・・?
「「・・・・・・えぇ!!」」
やっちゃんの驚きの声と一緒にあたしも声をあげてしまう。
「違う! あの・・・そうじゃなくて・・・」
順番どおり思い出したら変なこと言ってしまった・・・。
どうしよう・・・。
ダメだー!
頭の中パニックで全然言葉が出てこない!
「はつみー! まだ帰ったなかったの? あーっ! もしかして福嶋さん家泊まるのー?」
!!!!!!!!!!!!!
江実!! いつからそこに!? しかも間が悪すぎ!!
「違うよ! そうじゃなくて・・・もう帰るとこなんだ!」
「そうなんだー! じゃあ、これからカラオケ行ってくるよー! ・・・頑張ってね」
だから違うのにー!!
江実は手を振ってあんなこと言ったあとに嵐のように去っていく。
「「・・・・・・・・・・・・」」
どうしよう・・・やっちゃんも何も言わなくなってしまった。
あたしも何を話したらいいかわかんない。
ますます頭の中がパニックを起こしてる。
後悔するってわかってるのに言葉が出なくなってしまった。 








「はっちゃん家電車でしょ〜? 時間大丈夫〜?」
「あ・・・はい。そろそろ時間なので行きます」
結局何も・・・言えなかった。
やっちゃんはきっと帰って欲しいんだ。 
「あ・・・すみませんでした。わけのわからないこと言って・・・。あの、じゃあ、お元気で・・・」
「え〜! はっちゃん、送るよ〜。もう遅いし〜」
え・・・?
「あの・・・でも遠回りになるし」
まただ! 本当はもっと一緒にいたいのにどうして断るんだろう。
いいかげん学習しようよ! あたし!
「い〜の〜! オレが送りたいんだから〜」
やっちゃん・・・。どうしよう、嬉しくて泣きそうだ。
「あ! ありがとうございます!」
あの時と同じ、やっちゃんがチャンスをくれた。
これはきっと気持ちを伝えるための最後のチャンスなんだ!
「あ、ちょっと待ってて〜。錬に言ってくるから〜」
「はい! 待ってます!」
今度こそきちんと言うんだ。
やっちゃんが戻ってくるまでに心の準備をしよう。
もう絶対後悔しないように・・・。



「ごめんね〜、じゃあ行こうか〜」
「はい!」
やっちゃんの笑顔、ドキドキする。
側にいたい・・・そう言いたい。
やっちゃんの返事はきっと・・・ダメだと思う。
最後に会ってから3年近く経ってるし、彼女だっているかもしれない。
迷惑だと思うかもしれない・・・それでもきちんと伝えたい。
「はっちゃんの電車何分〜?」
「あっ、えっと32分です」
それに乗らないと駅からのバスがもうなくなってしまう。
本当に不便なところに家があるんだよね・・・。
「え〜! じゃあ少し急がないと間に合わないんじゃない〜?」
え? ここから駅までは15分くらいかな。今の時間は・・・。
「あーーー!! もう20分ですね! まずいです!!」
「あはははは〜、じゃあ急ぎめで行こうか〜」
「はい!」
あと10分ちょっとしか一緒にいられない。
言うんだ、自分の気持ち・・・。




「この街は夜になっても星、見えないよね〜。オレ最初少しホームシックになったよ〜」
夜になっても明るいこの街は一緒に帰ったあの日と違って、やっちゃんの顔がハッキリ見える。
「本当に、ここでは見えないですね。でも、今あたしが住んでる場所はここよりは見えますよ」
「そうなんだ〜。湿気が多いと星って見えないんだって〜。たしかに10月だっていうのにこの街はまだ暑いね〜」
「そうですね、北海道ならもう上着が必要ですよね。空気もひんやりしててすごく気持ちのいい時期」
懐かしい。今年の夏は帰らなかったからもう半年この街を出ていない。
一緒に過ごした『サクラ』も、一緒に歩いた道もつい半年前までは近くにあった。
通るたびにやっちゃんと帰った日のことを思い出した。
けど、やっちゃんに会えなくなってからは寂しくて全然違う景色に見えてしまった。




「そうだ〜! はっちゃんって、いつ頃まで『サクラ』でバイトしてたの〜?」
「3年生の春から看護予備校に夜間で通うことになったので、2年生の3月までです。やっちゃんが、試験に受かったのは奥さんから聞いて知ってましたよ」
すごく残念だったのを覚えてる。
たまたま従兄妹の結婚式でお休みをもらった日曜日に報告に来たと奥さんから聞いた。
すごく寂しくて、だからその後の圭介の告白が嬉しくてOKしてしまった。
なのに結局傷つけただけだった。
「オレ、辞めてからもたまに『サクラ』行ってたんだよ〜。でもなんでかはっちゃんのバイトの日じゃなくて、残念だったな〜」
「え・・・?」
ホントにそう思ってくれていたのかな?
だったらすごく嬉しい。




こうやってやっちゃんと会うことを、話すことを、どれくらい夢に見ていただろう。
あたし達の育った街でさえも1回も会えなかったんだから、この広い街でやっちゃんと偶然再会する可能性なんて0に等しいと思っていた。
今ここで二人でいることは奇跡だと思う。
これはきっと、あたしにやっちゃんが与えてくれるチャンス。
今度は正真正銘、本当に最後のチャンスなんだ。



「なんとか間に合ったね〜」
「あ・・・はい」
着いてしまった・・・。
世間話をしている場合じゃないのにー!
「・・・じゃあ、気をつけて帰ってね〜。勉強頑張るんだよ〜! 応援してるから〜」 
「あ・・・・・・」
行ってしまう・・・。
このままじゃあの時と何も変わらない。
チャンスを無駄にしたら後悔してしまう!!
「あの!・・・やっちゃん! どうしても言いたいことがあるんです!」
「・・・? どうしたの〜?」
奈緒に言われて気づいた日からずっと言いたかったこと。
「あたし、すごく寂しかったです!やっちゃんに会えなくなって!・・・」
「・・・? オレも寂しかったよ〜。だから今日会えて嬉しかったよ〜」
「あの! そうじゃなくて、やっちゃんの寂しいは違うんです! だって・・・」
あたしはやっちゃんがお兄さんとしてじゃなくて、男の人として寂しかったから・・・。
顔が上げられない、やっちゃんの顔が見れない。
すごく緊張する、今人生最大の緊張が全身に走ってる。
小さく深呼吸をする。
「はっちゃん・・・?」






今日は本当に楽しくて、幸せな時間だった。
この時間を最後にしたくない!!
「やっちゃん!! あたし! やっちゃんのこと・・・    です!」
・・・・・・・・・?
あれ? なんか一番大切な部分が何かの音に遮られたような・・・。
「・・・はっちゃん! 今フェンスの横走っていった電車、はっちゃんが乗るやつだったんじゃ〜?」
え!? え〜っと今の時間は・・・丁度11時32分!?
「あぁーーーー!!・・・そうです、どうしよう!! 最終なのにー!!」
どうしよう!! やばいよー!!
あれ乗らないと帰れないよーーーー!








ってそれも大事だけど、あたしはやっちゃんに思いを伝えるためにここにいるはず・・・。
肝心な部分がスッカリ電車に邪魔されて聞こえてないよーーー!
なんだかこう間が悪くちゃ言えなくなってきたよ・・・。とほほ。
最後のチャンスじゃなかったのかな?
神さまが言うなって言ってるのかな?
「あははははは〜! はっちゃん、顔がコロコロ変わってるよ〜」
やっちゃんの笑顔だ・・・。
なんだか自分の気持ち伝えられなかったのに、やっちゃんの笑顔見るとすごく嬉しい。
すごく幸せな気持ちになる。
やっちゃんのことすごく好きなんだなって思う。
伝えたいって思う。




「「あの!!」」
「「え・・・?」」
二人の声がぴったり合った。
可笑しくて顔を見合わせて少しの間笑った。
「やっちゃん先にどうぞ」
「いやいや、はっちゃん先にどうぞ〜」
「じゃあ、お言葉に甘えて・・・」
やっちゃんの笑顔・・・これが最後になるかもしれない。
けど、このまま何もしないよりは絶対いい。











「あの!! あたし・・・やっちゃんと一緒にいたいです! これからいつも・・・」
やっちゃんの目が一瞬で大きくなって丸くなった。
「つまりあの・・・あたし、やっちゃんが大好きなんです!」
言ったーーーーー!!
ついに言えた!
ずっと言いたくて言えなかった気持ち。
さすがに怖くてやっちゃんの顔は見れないけど、すごく気持ちは爽快だ!





「あは・・・・あはははははははははっ〜! はははははは〜!!」
え・・・?
やっちゃんの笑い声であたしは顔を上げた。
「やっ・・・ちゃん? あれ・・・?」
笑い話じゃないと思うんだけどな・・・。
う・・・・ん。なんだか初めてのシュチエーションだから、どういうリアクションされてもよく意味がわからないな。
「あの・・・やっちゃ・・・」
あれれれれれ?
ここは・・・やっちゃんの腕の中??????
えーーーーーーーーーっ!! 一体何が起きてるの?
「あ〜良かった〜。はっちゃんがオレと同じこと考えててくれて〜」
「え・・・・? あのっ! それってどういう意味ですか?」
やっちゃんの腕の中にいるってことで、さっき以上に頭がパニックなんだけど、どうしたらいいの!?






「はぁぁぁぁぁぁぁぁ〜」
えーーーー? 今度はため息? 
「あの・・・? なんか失礼なこと言いました? ごめんなさい」
よくわかんないけど、気を悪くしちゃったのかな?
「うん〜・・・敬語はイヤだな〜」
「え・・・? だってやっちゃんは先輩ですから」
あたしは抱きしめられてて、やっちゃんの顔が見えない。
だからますます意味がわからない。
「え〜!? はっちゃんって先輩としてオレを好きなの〜?」
「違いますよ! あたしは・・・一人の男の人として好きです」
なんだかパニックに陥りすぎて、ポロポロ言葉が出てくる。
あんなに言えなかったのに、自分のいる状況から比べると言葉を発するのが一番理解できる事だ。
「そっか〜良かった。じゃあ、敬語やめてよ〜?」
「え・・・? だって先輩に対して失礼ですから・・・」
「う〜ん〜。オレははっちゃんのこと後輩とか思ってないよ〜」
言ってる意味がよくわかんない。
心臓の音が大きすぎてどうかなってしまいそう。
「よし、わかった〜。はっちゃん今日オレ家にお泊まりね〜」
「えぇ!!」
一瞬やっちゃんの手が緩んだのと驚いたのが同時で目があった。
やっちゃんの顔がすぐ近くにある。
「あ・・・・オレの心臓の音うるさいよね〜」
「え・・・?」
「しかも、なんかすごいエッチな人みたいだ〜・・・オレ〜」
「えぇ!!」
やっちゃんの苦笑い、初めて見たかも。
「でも〜・・・はっちゃんと一緒にいたい〜」
「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
ますますパニックになってもう、まともにやっちゃんの顔が見れない。
あれ・・・?
本当だ、やっちゃんの心臓すごくドキドキしてる。
「やっちゃん・・・? 心臓すごいですよ?」
あたしの心臓といい勝負だ・・・。
なんで?





「そりゃそうだよ〜。ずっと大好きだった人に告白しようとしてるんだもん〜」
「えぇ!!」










おわり。






<前 おまけ(泰広サイド)>

 

 <<戻(top) <<小説 <<目次



▽ランキング投票用ボタンです。お気に召しましたら1クリックお願いします!(月1回)


 

Update:10.15.2004


後書き。

なんとものんびりした2人のマイペースな恋愛。
いかがだったでしょうか?
泰広サイドはかなりノロケっぱなしでしたが、
私も「おいおーい! 戻っておいで!」という気持ちで書いていました。

私も高校生の頃、コンビニでアルバイトをしていました。
その時に実際にあったことがはつみ達に起きたことに混ざっています。
中々楽しい経験でした。

ちなみにやっちゃんという素敵な人がいたかということですが・・・。
ご想像にお任せするということで。

<戻る




SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送