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眠る記憶

 

第1章 輪廻





まぶしい。
体が・・・
「痛い」
心配そうにこっちを見ているのは、龍?
「大丈夫?」
「痛い・・・、顔とか・・・」
ホントにすごく痛い・・・
「あはははははは!萌ちゃぁん!ハナ気がついたよ!」
龍が笑ってお母さんを呼びに行った。
「もう、あれほどブランコ立ちこぎしちゃダメだって言ったでしょ? 一週間は、ストローでご飯食べなきゃ行けないって」
ブランコ?
そうだ、龍と一緒に公園で遊んでたんだブランコこいでたんだ。
お母さんの横で心配そうな可奈ちゃんと笑いつづけてる龍・・・
・・・?
笑いつづけてる・・・
お母さんが鏡をくれた。
「唇が切れて、血だらけで倒れていたんだから。心臓止まるかと思ったのよ」
唇が切れて・・・かさぶたになってる。
ドリフの物まねする人が唇につけるおもちゃみたい・・・
「何これ!!」
大声で叫んでいた。







小学校二年生の時の、このブランコの一件のときに見た断片的な夢・・・
小学生だった私には、シオンという女性の気持ちはあまりわからなかったけれど、シュンランという人への思いがテレビでよく言う「愛」って感情なのかなぁ。と勝手に納得し、二人の関係に憧れを抱いた。








それから、その不思議な夢を見ることはないまま、私は大学3年生になった。








「おはよ〜!可奈ちゃん、龍、起きてる?」
家のベランダから顔を出し、隣で洗濯物を干している可奈ちゃんに話し掛けた。
「さっき起きたとこなの、朝ご飯出来たから、こっちに来てぇ」
「はぁい!」
3年前からマンションの隣に住む、朝井一家は私のお母さんと、龍のお母さんが従姉妹どうしでこのマンションが建てられたとき、一緒に隣同士を購入した。
それ以来、隣に暮らしている。
まぁ、それまでだって、歩いて5分の距離に住んでいたんだけど・・・
「いただきまぁす」
私の家は共働きだから、専業主婦の可奈ちゃんの作った朝ご飯を龍と食べるのが、毎日の日課。
「今日、就職相談の面談なんでしょう?二人とも時間大丈夫なの?」
ご飯に夢中になってて時間を忘れてた・・・
「やばい!!」
龍が大声を出す。
恐る恐る時計を見ると、約束の時間まであと30分しかない・・・
「いってきまぁす!」
あわてて龍の車で、大学に向かう。
これも、毎日の日課。
毎日繰り返す、幸せな日常。
「龍、就職はどこで探すの?」
卒業したら、龍はどうするつもりなのか・・・
就職活動を本格的に始めて気づいた
いつまでも、この日常が続くわけじゃないって・・・
「オレは、警察受けようと思ってるよ」
・・・龍が警察官?
「でも、なんかまだ実感湧かないんだよな。始めたばっかだし。でも、警察が第一志望かな」
「なんで警察なの?」
今までそんなこと一度も言ったことなかったのに・・・
「なんとなく・・・今度は自分の力で人を守れたらって思って・・・」
「?」
龍は答えの意味はその時はよくわからなかった


「ハナ走るぞ!」
約束の時間まで5分を切ってる!?
駐車場から就職課まで二人で走り、入り口で息をととのえた。
「失礼します」
まだ、前の人の面接が終わっていないらしく、担当の職員が席をはずしていた。
「間に合った・・・」
「まだ時間あるみたいだし、ハナ先に受付してて。オレ入り口の掲示見てくるわ」
龍はそう言って、就職課の入り口にある掲示板へ向かった。
とりあえず、受け付けするか。
私は、窓口に座っている職員に話し掛けた。
「すみません、10時から就職相談の面接を予約している、倉田です。受付をしたいのですが・・・」
職員は男のひとで、胸に“中澤愁哉”と書かれたネームをしていた。
「倉田・・・花凛さん・・・9時30分からの面接が長引いているみたいなのでもう少し待っててくれるかな?」
中澤さんが、時計を見ながら申し訳なさそうに言った。
「わかりました」
その場を離れようとしたとき、龍が受付をしに窓口に来た。
私の隣で龍が中澤さんに話しかけた。
「朝井龍です、受け付けをお願いします」
龍の声に中澤さんが、顔を上げた。
中澤さんは、一瞬龍の方を見つめ動きを止めた。
龍も中澤さんの目を見つめ、動かなくなった。
・・・!?
私の体も何かにつかまれたように動けなくなった。
私は懐かしい不思議な感覚に陥った。

「・・・サラジュ・・・?」
中澤さんがそうつぶやいたのが聞こえた瞬間、私達は意識を失った…








 

 

 

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