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眠る記憶

 

第3章  瞑想(3)― 倉田花凛 ―






少し悩んだけど、昨日中澤さんに連絡した。
彼は会ってくれると言った。
電話で話した声は、病院の時とは違う人のもののように感じた。
待ち合わせは中澤さんの仕事の定時に合わせて、明日の午後6時大学の職員用の駐車場にした。






就職課で中澤さんに初めて会ったあの日から10日が過ぎていた。
その間シオンの時の記憶がこれ以上戻るのが怖くて龍を避けていた。
龍も同じように思っていたのかあたしに会いに来なかった。
物心ついて以来こんなに龍に会わなかったのは初めて・・・。


こんな風に部屋に閉じこもって、考えこんで涙を流すなんて全然あたしらしくない。
そう思っていても、自分の思うように行かない。
シュンランのことを思うと涙が止まらなくなる。
「シュンランに会いたい」
そう思うシオンをあたしが慰める。
心に2つの意識があるような不思議な感覚。


たまにあたしの意識がギュっと奥の方に押し込められてそこからシオンを眺める、そんな瞬間があった。
初めは自分が『シオン』という存在に『倉田花凛』が取って代わられるんじゃないかと不安になったけれど、次第に子供の頃にブランコから落ちて夢を見た時と同じでそんなにもお互いを思いあえる二人を少し羨ましく思えた。
そんな風に思うようになってからはシオンの意識が表に出てシュンランを思い泣いていても見守ることにした。


そう思えるようになって、二人に会うのが急に怖くなくなった。
だから、昨日思い切って中澤さんに連絡した。
あたしとしても思い出せない記憶を聞きたいっていうこともあったけど、シオンのために中澤さんと会うことにした。
地球ではシオンとシュンランは結ばれない。
そうシオンに教えてあげるためにも・・・。


それにしても、どうしてそんなにも一人の人間を愛せるのか・・・。
あたしには正直ピンとこない。
そんな経験をしたこともないし。


でも、そんな風に泣くシオンがとても可愛い女性だと思った。
現世と前世でこんなに全く別人になるんだから不思議。
ホントにあたしの前世がシオンなのかも疑問に感じるくらい共感できることが少ない。
変なのぉ・・・。


龍に会いたいなぁ。
こんな風に一人でぼぉっとすることなんて今までなかった。
時間があったら龍の家でくだらない話したりしてたから・・・。
それにしても龍がサラジュさまだったとは。
ちょっとおかしい。
あたしは声を出して笑ってしまった。
シオンにとってサラジュが兄のような人だったように、龍もあたしにとって兄妹のような存在だ。
生まれ変わってもなおあたしのことを心配してくれて理解してくれる。
憎まれ口とかも言うけど・・・。
それでもやっぱり一緒にいて一番安心できる空気みたいな人だもんなぁ。
龍ってすごいなぁ・・・。
あたしもちょっと位は龍の役に立ってるのかな?


でもお母さんが仕事していて良かった。
お父さんが単身赴任で家にいないのも、いつもは寂しいけど今度だけは良かった。
二人ともきっとすごく心配症だから、あたしが部屋から出てこないとなると大変な騒ぎになっていただろうし。


会って中澤さんの家族のことが納得できたら、きっとこの涙も止まる。
安心してシュンランの待つ天国へシオンの魂も転生できる。


・・・。
それにしても、就職課で思い出した記憶に子供の頃の夢に出てきたローレルでの出来事の大切な部分が欠けていた気がする。
あたしはシュンランと逃げて、その後どうなったんだっけ?
二人で幸せに暮らしていた時の記憶までで止まっている。
あの日、シュンランと病院に行った帰り道、なにか良くないことがあった・・・?


”ドクンドクン”
心臓が大きな音を立てる。
シオン?何かを怖がってるの?
・・・何を?
やっぱり二人に会ったら聞いてみよう。


そうだ、龍にも明日のこと連絡しないと。
なんか今まで会ってなかったから、少し気まずい。
・・・。メールにしよう。
なんか少し明日が楽しみ!
龍に会うのにこんな風に思ったの初めてじゃないかなぁ。
でもなんか懐かしい感覚。
なんで懐かしく思うのかな?
こんなワクワクする感情抱いたことあったっけ?






メールで約束した時間に龍が家に迎えに来た。
家の呼び鈴が鳴った時、龍に会うのにすごく緊張した。
なんだかよくわかんないけど、少し龍が大人になったように見えた。
気のせいに決まってるけど、カッコよくなったようにも見える。
「背、伸びた?」
「はぁ? 伸びるわけないじゃん。たった10日くらいで高校生じゃないんだから」
「そうだよね」
そうか、背が伸びたから大人に見えたのかと思ったのに。
老けたのかな?
当たり前だけど、龍は龍だった。
こんなに会わないのが始めてだったから普通に話せるかなって思って不安だった。
でも龍が龍で嬉しかったし、安心した。
あたしなんか変なことばっかり考えてる。
「プッ!」
あんまり自分の考えがバカバカしくて笑ってしまった。
「何笑ってんの? 思い出し笑い? 変態?」
「うるさいなぁ! 龍の顔が変だから笑っただけ」
ホント憎たらしい、でもなんかこんな当たり前のことさえ嬉しく思ってしまった。
「うわ! ひでーっ! オレ母さん似だからなぁ、これは母さん泣くよ」
「あははは、だってホントだもん! でも、可奈ちゃんごめんなさい」
楽しい、こんなくだらない会話なのに・・・。


話してみると当たり前だけど、龍はサラジュさまじゃない。
サラジュさまはこんなに悪態つかないし、くだらないことなんて言わない。
でもすごく楽しくて笑いが止まらなかったし当たり前の空気に安心した。






待ち合わせ場所の教職員専用の駐車場に向かう。
普段この駐車場には守衛さんがいて入れない。
どうしようか龍と相談しながら向かったけど、この時間になると守衛のおじさんもいなくてあっさり入れた。
車の中にいたら見つけづらいかなぁ、って思って龍と車から降りて中澤さんを待った。



心臓の音が早い。
シオンだ・・・。
やっぱりなんかこの気持ちすごく懐かしい。
・・・。
そっか、シュンランと待ち合わせして、あの場所へ向かっている間のドキドキと同じなんだ。
でも、なんでさっきは龍に対してこんな風に思ったのかな?
変なの・・・。
でもあたしもシオンみたいに、こんな風に思える相手にいつか出会えるのかなぁ?


6時を少し回った。大学の出口の方に目をやった。
中澤さんかな?
スーツ姿の男の人が、こっちに向かってきている。
さっき以上のスピードで、心臓が音をたてる。
「あっ、あれ中澤さんじゃね?」
龍が中澤さんに気づいて、手を振った。
中澤さんは龍が手を振っているのに気づいたらしく、駆け足でこちらに向かって来る。
ますます心臓が早くなる。
このままのスピードだと、一生分動いてしまうんじゃないかとちょっと心配・・・。


病院の時はあたしは良く見れなかったけど、中澤さんは走り方も綺麗で背もスラリと高い。
スポーツマンなのかな?
スーツ着ているからよくわからないけど、唯一出ている首はけっこう太い。
思わず龍と見比べてしまった。
・・・全然違う。
龍、もう少し鍛えた方がいいかもよ。


若く見えるけど、一体いくつなんだろう・・・?
でも大学で働いてるってことはあたしより年上だよね?
”ドクン”
シオン?
胸騒ぎがする・・・。
これ以上思い出してはいけないようなそんな胸騒ぎ。
どうして?



「ごめんね。待たせちゃって」
中澤さんは走ってきたにも関わらず、息は乱れていない。
やっぱりスポーツしてるのかな?
ちょっとカッコイイかも。
「いえ、あたしも龍も今ついたとこですから」
ホントは早く着きすぎて、20分くらい待ったけど一応そう答えた。
中澤さんがここに来てから、心臓の動悸はピタリと治まった。
シオンの意識も感じられなくなった。
・・・? もう諦めて天国に行ったのかな?


「どこか行こうか、今ちょうど職員の定時だからたくさん人来るし。学生さんがここにいると口うるさい人もいるから」
中澤さんは冗談っぽくそう言った。
病院の時の印象とは違って、面白い人なのかもしれないな。
あの時はなんだかすごく必死に見えた。
今日はなんだか、優しいお兄さんのように見える。
なんだか不思議だな。



ここで話し込んでたら中澤さんにも迷惑がかかるといけないから、大学から少し離れたカフェに車を置いて向かった。
龍の横を歩いている中澤さんをちらっと見た。
想像以上に背が高い。
龍は確かこの春の大学の健康診断で測った時に、身長176センチ体重は63キロって言ってたっけ。
一歩下がって二人を見ると、10センチくらいは違いそう・・・。
それに中澤さんはなんだか筋肉質に見える。
「あの、くだらないこと聞いてもいいですか?」
中澤さんに声をかけた。
「くだらないことなの? どうしよっかな・・・。ウソ、いいよ」
笑いながらそう答えてくれた。
やっぱり前に見たときとだいぶイメージが違うなぁ。
「ホントに今聞く事じゃないんですけど、身長何センチですか? なんか龍よりかなり大きく見えたから」
「ハナ・・・中澤さんすみません。ホントしょうもないこと聞いて。・・・で何センチですか? しかもかなり筋肉質っすよね!」
龍・・・。
あんたの方がかなりしょうもないよ。
一瞬龍の横で苦笑してしまう。
そう思いながらも、二人とも興味津々の目で中澤さんを見つめてしまった。
中澤さんはそんな二人の様子を見て、笑い出した。
「ははははは! あっ、ごめんごめん。就職課で見たときと印象が違ったから」
謝りながらも、笑いが止まらない様子でしばらく笑っていた。
「身長ね、えーっとたぶん185-6センチじゃないかなぁ。しばらく測ってないからよくわかんないけど」
185-6かぁ・・・シュンランはどのくらいだったかな。
そんなことをふっと思った。
こんなに背は高くなかった気がするけど・・・。
「二人は仲が良いみたいだけど、恋人?」
中澤さんがあたし達に今度は質問してきた。
「違います! 幼馴染っていうか、家族っていうか・・・なんかそんな感じです!」
びっくりして、なんか声が裏返りながら否定してしまった。
それを見て中澤さんがまた笑った。
「はな・・・めちゃめちゃ声裏返ってるぞ」
龍は呆れた顔しながらも、裏返ったことで真っ赤になったあたしの顔を見て笑った。
あたしも、もう笑うしかないでしょ・・・ってことで一緒に笑った。
ローレルでは3人で会ったことは一度もない。
だから、3人でこうして笑いあったこともない。
なのになぜか懐かしい気がして、くすぐったい気持ちになって幸せな気持ちになった。
あの3人が地球で生まれていたなら、もっと違う生活を送れていたかもしれないのに・・・。






職員の駐車場のすぐ近くにある陸上競技場の奥が大学の敷地の外へ出る近道なのでそこを通って行くことにした。
3年生になった今年まで、こんな道があることすら知らなかった。
中澤さんはさすが職員さんだけあって、近道に詳しいのかな・・・。
横の陸上競技場を見ると夕方の6時過ぎなのに、競技場で練習している人達がいる。
なんかすごい防具を付けている。
アメリカンフットボールかなぁ?
「愁哉!」
ボーっとそんなことを考えながら歩いていると後ろから声がした。
愁哉・・・中澤さんのこと?
中澤さんは声の主が分かったらしく、すぐに振り返った。
あたしと龍も振り返った。
その人物は一瞬驚いた顔をして、なぜか龍の方に近づいて来た。
知ってる人なのかな?
「・・・? 朝井と愁哉知り合いか?」
「宮ちゃん! 中澤さんの知り合い?」
龍が笑顔でその人物に話し掛けた。
よく状況が飲み込めない・・・。
でもこの人どっかで見たことある。
宮ちゃんってあだ名も聞き覚えがあるし・・・。誰だっけ?
・・・でも、すっごいカッコイイ!
中澤さんと同じくらい筋肉質だし・・・。
あー! 思い出せない・・・。
「錬、朝井君と知り合いなの?」
中澤さんも驚いた様子・・・。
れん?・・・その名前にも聞き覚えがあるような、ないような・・・。
「オレが美並に就職して最初に副担になったクラスの生徒なんだ。久しぶりだなぁ、朝井」
・・・。あー!! 高2の時、龍の副担だった宮坂先生だ。
あたしは授業習ってなかったから、すっかり忘れてた。
宮坂先生も当然だけど、全くあたしを知らない感じだ。
「宮ちゃんと中澤さんはなんで知り合い?」
龍はニコニコしながら先生に話し掛けてる。
宮坂先生とかなり仲良しだったもんなぁ。
なんかすごく嬉しそう。
「オレと錬は高校、大学と同じアメフト部だったんだ。それにしても世間は狭いな・・・」
「ホントだなぁ。朝井と愁哉も知り合いだったとは、驚いたよ」
ホントに世間は狭いなぁ。
美並の高等部は1学年20プラス芸能科3の計23クラス。
宮坂先生は女子生徒に人気があったから覚えているけど、知らない先生の方が多い。
・・・でも覚えてたって言えるかな?


それにしても中澤さんもアメフト・・・。だからこんなに筋肉質なんだぁ、納得。
宮坂先生は相変わらずカッコいい。
先生はアメフト部の顧問だったから、ルールも知らないのに友達と良く見に行ったっけ・・・。
親身になって相談にのってくれるらして、男子生徒にも人気があったなぁ。
なのにスッカリ忘れていたあたり・・・。
だから、恋人募集中が2年続いてるんだなぁ。


「錬、大学の方の練習見に来たのか? 夏休みだから、練習今日は終わってると思うけど・・・」
「今日大学の学生の自主トレ見てやる約束してたんだ。だから、高校の部活終わってから来た」
宮坂先生と中澤さんはホントに仲が良いんだな。
なんか二人とも学生と話す時と違って、顔が緩んでる。
「そっか、悪いな。オレ今から二人の進路相談だから、今日はまっすぐ帰るわ。よろしく頼む」
・・・、そうだよね。「前世の時の知人なんだ。その記憶が戻ったからその話するんだよ」とは言えるわけがないよね。
「宮ちゃん、今度飲みに行こうよ」
龍はホントに嬉しそうに宮坂先生に話しかけてる。
あたしと話すときより、幼く見える。
「朝井も飲める年になったのかぁ。早いなぁ。よし、じゃあ今度な」
宮坂先生は優しい笑顔で返事した。
「絶対ね! 連絡先聞いてもいい?」
「いたずら電話するなよ」
宮坂先生は、龍からケータイを借りて番号を入力した。
「じゃあ、部活がんばってね」
龍は満足そうにケータイをポケットにしまいながらそう言った。
「朝井も勉強頑張れよ!」
宮坂先生は笑顔でそう言うとアメフトの選手が練習している陸上競技場へ走っていった。






カフェに着いて龍が最初にローレルのことについて切り出した。
「中澤さんおれ達に話があるって言ってましたけど、それってローレルのことですか?」
中澤さんは小さく頷いた。
カフェまでの道で全くそのことに誰も触れなかったから、あたしは少しビックリした。
「いくつか聞きたいことがあるけど、オレは二人に会ってローレルでのことを思い出した。それまでは全く覚えていなかった。二人はその前から記憶があったのか?」
中澤さんは真面目な顔で、あたしと龍にそう聞いてきた。
「あたしは、小学生の時に遊んでいてブランコから落ちたことがあって。その時に少し思い出したんです。でも、就職課でハッキリ思い出すまでただの夢だと思っていました」
そう、ただの夢だと思っていたことが実際に起きた現実だった。だから、怖かったんだ。
「ブランコの時思い出したのか。知らなかった・・・」
龍が中澤さん以上にすごく驚いている。
「あれ? 龍に言わなかったっけ?」
あの時は、体が痛くてそれどころじゃなかったからかなぁ。
「オレもあの就職課で倒れた時に夢で思い出しました。ただ、ハッキリとはわからないんですけど思い出せていない記憶があるような気がするんです」
龍も思い出せていない記憶がある・・・。あたしと同じだ。
「龍もか・・・。あっごめん、なんか倉田さんにつられて」
「全然気にしないで下さい、龍でいいっすよ。オレも愁哉さんって呼んでいいっすか?」
二人でなんか仲良くなっていく・・・。
あたしだけ仲間外れ?
「あぁ、オレも好きに呼んで。なんか変な気持ちだな。こうしてシオンとサラジュの生まれ変わりとこうしてあっているなんて」
「オレもホント不思議な気持ちっすよ。なんだよハナ変な顔して・・・。こいつもハナでも花凛でも好きに呼んでやってください」
ちょっとムカツクけど、仲間に入れてもらった気がする・・・。
「あたしも愁哉さんって呼ばせてください!」
笑顔でお願いしてみた。でも、少し力入り過ぎたかも・・・。
「どうぞどうぞ、じゃあ、花凛って呼ばせて下さい」
少し笑いながら愁哉さんがそう言った。
花凛・・・。シオンのせいかな?なんかすごく胸がドキドキする。
うん、きっとシオンのせいだよね。名前呼ばれた位でドキドキしたことないもん。
「じゃあ、続きなんだけどオレも思い出せていないことがいくつかあるんだ。曖昧な部分がたくさんあって・・・」
愁哉さんも・・・。
3人とも思い出せない記憶がある・・・。
それは共通しているのかな?
「あたしも思い出せない記憶があるんです。3人とも思い出せない記憶は共通しているんでしょうか?」
龍と愁哉さんは少し驚いた顔をしてあたしの方を見た。
「花凛にも思い出せない記憶があるとすると、その可能性も高いかもしれない。オレが一番ハッキリしないのは、なぜここにいるか・・・だ」
”ドクン”そう心臓が大きく音をたてた。
どうしてだろう・・・。やっぱり思い出してはいけない記憶なんだろうか。
「オレ・・・シュンランは前世でシオンを連れて天空宮を出るという大罪を犯した。なのにどうしてオレは地球に転生しているのか」
ますます心臓の音が大きくなる・・・。
シオン?シオンが思い出すのを怖がっている。
「それならオレ覚えてます。サラジュがベキアに頼んだんです。“シュンランの魂を救ってくれ”って」
愁哉さんが驚いた顔をして龍を見た。
その顔がシュンランとダブった。
「・・・。そうか、ありがとう・・・」
そう言ったっきり愁哉さんは黙ってしまった。
「いえ・・・」
龍もそう言って黙ってしまった。
あたしもそれきりずっと黙っていたけれど、龍が沈黙を破って話し出した。
「サラジュは、すごく後悔していたんです。二人を天空宮から出る後押しをしたことを・・・。本当に自分のしたことは正しかったのかって」
”ドクン、ドクン”心臓が壊れそうな音をたてる。
シオンの意識にあたしの意識が隠されていく感覚・・・。
でも怖がっているのかそれを躊躇っているようになんども二人の意識が行き交う。
「二人を大切に思ってしたことが、あんな風にシュンランを・・・」
龍がサラジュさまに見える。
胸がすごく熱くなる。
”あんな風にシュンランを”? どういう意味?
思い出したくない・・・。怖い!
「シュンランは後悔していなかったよ。あんな形でこの世を去ったことも・・・」
・・・。
頭に電気が走った気がして、思考が完全に停止した。
目の前が真っ暗になった。
「ハナ!」
そうあたしを呼ぶ龍の声が聞こえた気がした。
だけどあたしはそのまま、ローレルの記憶へと落ちていった。





 

 

 

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