眠る記憶
第7章 混迷(1) ― 倉田 花凛 ―
あたし・・・どこに向かっているんだろう。 どんどん家から遠ざかっている。 愁哉さんのこと龍には言えない。 だけど離れたくはない。 愁哉さんとも龍とも・・・。 ・・・・・・・・・・・・・? あたしが離れたくないのは、本当に愁哉さんなのかな? それともシュンラン? 自分の意識が後ろの方に追いやられている。 どうしたらいいんだろう・・・このままでいいの? あたしは・・・? ”シオン・・・どこにいるんだ?” これはコキア!? どうして・・・? ”私はここにいるわ、シュンラン! 会いたい・・・会いたい” あたしが使っているんじゃない。 シオンとシュンランの間で使っているんだ。 愁哉さん・・・一体どうして? 奥さんは一体どうしたんだろう。 あたしと同じ状態? 意識がシュンランに奪われているの? ”シオン・・・オレもずっと君を探していたよ” シオンが泣いてる。 あたしまで胸が熱くなる。 子供の頃、ブランコから落ちた時に感じた気持ち。 人を愛するっていう気持ちと同じ。 こんなにシオンはシュンランを思っている。 じゃあ、あたしは? あたしは誰を思っているんだろう・・・? 愁哉さん? 奥さんがいるってわかっているのに会いたかった。 龍に知られたらきっと嫌われるって分かっているのに会うのをやめられなかった。 あたしも愁哉さんを愛してるのかな? それともそれはシオンの気持ちがあたしに大きく働いていたからかな? けど、このままでいいの? あんなに幸せそうだった家族はどうなるの? 自分だって裏切りの片棒を担いでいるくせに、急に怖くなる。 だって絶対に正しくないってわかってるから。 ”シオン・・・。今、迎えにいくから” まただ・・・。 胸が締め付けられるみたいに苦しくて熱い。 このままシオンに完全に意識を奪われてもいいような気までしてくる。 そのくらいこの感情は心地良い気持ちだ。 けど・・・龍は? このままシオンに流されて、龍のことわからなくなったら? 家族はどうするの? 会えなくなるの? このままどこに行くの? あたしは一体誰になってしまうんだろう。 これまでの倉田花凛としてのあたしはどこに行ってしまうんだろう? ・・・・・・怖い。 シオンになるってことは、ハナはいなくなるってことだ。 このままあたしが消えてしまったら・・・? じゃあどうすればいいの!? わかんない、わかんないよ! どうしたらいいんだろう・・・? どうしたらシオンからハナに戻れるの!? 誰か助けて! 助けて!! 助けて!! 助けて・・・・・。 そうだ・・・前もそう祈った。 けど、結局あたしの意識がおいやられてしまった。 どうしたらあたしはあたしに戻れるんだろう・・・。 遠くにに息を切らせて走ってこちらに向かっている男の人が見える。 愁哉さん・・・ううん、シュンランだ。 こっちに気づいて幸せそうに笑っている。 シオンはどんな表情をしているのか、あたしには見えないけど胸がすごくドキドキしてるのはわかる。 幸せそうに鼓動を打っているのがわかる。 シュンランはこっちにゆっくり近づいてきた。 「シュンラン・・・来てくれたのね」 シオンの言葉にまた幸せそうに笑った。 「うん・・・今まで長い間待たせてごめん」 シオンもシュンランに向かってゆっくり歩き始めた。 怖い・・・。 このままじゃ、シオンはシュンランとどこかに行ってしまう。 どこかに行ってしまったらあたしの意識を完全に奪われてしまう気がする・・・。 ・・・もう2度とあたしに戻れなくなる。 シオン!! それ以上シュンランの側にいっちゃダメだよ!! ダメだよ!! やめて!! 龍・・・・・・。 助けて・・・・・・・・・龍ーーーーーーーーっ!! |
Update:12.12.2004
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